緊急指令!
583系特急つばめを追尾せよ
作戦日:2004(平成16、皇紀2664)年10月2日土曜日
 

 新幹線が開業して、今日で40年と1日。その記念かどうかは知らないけれど、かつての東海道本線の名門特急『つばめ』が583系特急形電車で復活運転されます。583系は世界初の寝台・座席両用車として登場し、現在でも夜行急行や臨時・団体列車に使われていますが、国鉄時代の塗装をまとうものは6両編成と9両編成が1本ずつあるに過ぎません。今回は9両編成が使用されます。今回の作戦はそれを撮影し、いつか弊サークルの同人誌『鉄道集』の『列車生け撮り大作戦』に載せることです。
 つばめに使われた列車は様々で、過去には実際に583系も使われました。しかし583系が登場したときにはとっくにつばめ号は東京乗り入れを終了しており、大阪と九州を結ぶ特急になっていました。なので、583系つばめが東京都内へ乗り入れるのは、実は今回が初めてだったりするのです。純粋な『リバイバル』とはちょっと違います。
 
 今日のつばめは品川始発の団体専用列車として運転され、発車時刻は9時18分です。発車番線は臨時ホームの8番線。
 9時前に品川駅の臨時ホームに行ってみると、既に列車は入っており、先頭車クハネの周囲は撮影者たちで黒山の人だかりになっていました。最後尾の人だかりはまだいい。先頭部では何やらセレモニーらしきことをやっており、近づくことすらできないほどの人混み。とりあえず回れ右をして立ち去り、編成の最後尾から1枚撮りました。
 そして編成全体を撮ろうと隣のホームへ行ったら、なんと踊り子号185系電車の回送が止まっていて、邪魔しているではありませんか!「誰だ、こんな所に置きっぱなしにしやがったのは!撮影できないではないか!早くどかしやがれ!」と、心優しいこの私は、表情にも出さず、そう思いながら次の作戦を考えるのでした。
 今回のつばめ号は名古屋行きだけど、なぜか7時間をかけて行くらしい。7時間あれば、わざわざ特急に乗らなくても、普通列車と快速列車の乗り継ぎで充分行けます。現在、明るいうちに東京〜名古屋間を走破する特急列車は、上りの寝台特急富士です。富士は名古屋〜東京間を5時間弱で走ります。つまりこのつばめ号は、どこかで長時間停車するということ。そして実際に、根府川駅で撮影会をするそうです。
 
 思いついた作戦とは、これから普通列車で根府川へ行き、撮影会に参加するという作戦。でも早くしないと、途中でつばめに抜かれて、間に合わなくなってしまうかも知れません。しかし既に、東海道線の下り列車は、9時14分発の普通小田原行き、次が9時21分発の普通伊東行きでした。根府川駅は小田原駅の先だから、どちらにしろ間に合わないじゃ〜ん。こうなったら、途中駅のホームの先端から通過するところを撮影するしかありません。とりあえず9時14分発(113系)に乗ってみます。
 川崎、横浜と停車していく列車。しかしいずれのホームも、先端には階段やら変な構造物やらがあって、撮影には向きませんでした。そして次に停車した戸塚駅。ここのホームの先端部には邪魔物がありません。よし、ここで撮影しよう。
 列車を降りると、既にそこには“同志”たちが集まっておりました。それでもまだカメラを構えるスペースがあったので、そこから撮影することにする。
 しばらく待つと、すぐ目の前の踏切が鳴り、列車が通過する旨の駅構内放送が流されました。さぁ、いよいよ来るぞ、と思ったら、やって来たのはスカ色の115系を使った快速でした。普段は中央本線の山岳地帯で働いている山男も、たまの休みには海を見たいのでしょう。
 快速が去った後、また踏切が鳴り、列車が通過するという構内放送が入りました。さぁ、いよいよだぞ!シャッターチャンスを逃すまいという緊張感に包まれる同志たち。そしてついに、つばめ号が姿を現しました!来たーっ!全員で一斉にシャッターをきります。
 そしてそれから、ダメもとで根府川へ行ってみることにしました。突発で運転される臨時列車は、定期列車のダイヤをぬって走るので、もしかしたら撮影会に間に合うかも知れません。
 普通列車(113系)と快速アクティー(211系ロングシート車)を乗り継ぎ、11時30分過ぎに根府川に到着。すると隣には、あのつばめ号が止まっているではありませんか!よかった、撮影会に間に合った。快速アクティーは、銀箱などを持った鉄道ファンたちを降ろすと、何事もなかったかのように走り去っていきました。
 根府川駅は二面のホームと3本の線路を持っています。下り本線、上り本線が各1本ずつと、追い越し列車を待避するための線路が1本。つばめ号は待避用の真ん中のホームに停まっておりました。
 とりあえず編成全体を撮るべく、そのままホームを歩く。そして編成全体を撮れるポジションに着くと、そこはもう大変な人だかりでした。皆、ホームから落ちんばかりに身を乗り出して撮影している。その後ろには撮影待ちの人が控えている。ただでさえ狭いホームに植え込みが作られ、余計に狭くなっているところにこの人だかり。もう修羅場です。臨時に配置されたJRの職員などは、皆が安全に撮影できるように、一生懸命仕事をしています。
 場所がようやく空いたので、速攻で撮影。日当たりもよく、編成全体をとらえることが出来ました。とりあえず、ミッションは達成です。
 撮影中そのままの姿勢でホッとしていると、間もなく、接近列車がやってくるから白線の内側に下がって下さい、とJRの職員がメガホンを使って知らせてきました。撮影させると前の人を避けてカメラを構えたがるので、徐々に前に出てくる。それでは危ないから、カメラを下げて下さい、と、撮影休止のお願いもしています。
 それから1分後、スーパービュー踊り子がやって来ました。ビュー踊り子と583系が一瞬、横に並ぶ。滅多に見られない組み合わせですが、安全のため撮影は禁止。ビュー踊り子は安全確保のためか、かなり速度を落として目の前を通過していきます。ビュー踊り子の乗客はきっと、この人だかりにビックリしていることでしょう。
 今度はつばめが停まっている方のホームへ行って撮影。ここもホームの縁ぎりぎりに人が並んでいます。中には思い切り身を乗り出し、辛うじてホームに足を乗せている状態の人も。よくもまぁ、落ちずに撮影できるもんですねぇ。感心します。
 しばらくすると、戸塚駅で乗ったあの113系普通列車がやってきて、一瞬横に並びました。なんだか関西に乗り入れた夜行急行『きたぐに』を彷彿させる光景が。東海道本線東京口の113系はまもなく新型車両に置き換えられるので、この組み合わせは後々貴重な写真になるかもしれません。とりあえず撮っておきます。
 113系が去った後も、撮影は続きます。後ろからは、『黒い(Tシャツの)人、すみません!(どいて下さい)』などと言っている人がいます。事実、どう頑張っても、この混雑では前で撮影している人の体の一部が入ってしまいます。中には『後から来たくせに、前に入ってんじゃねーよ!』などと罵声を浴びせる人もいますが、放っておきましょう。体の一部が入ってしまうことは臨時列車の撮影会独特の風物詩とでも考えて、逆にそれを利用して場の雰囲気を伝える写真を撮るといいかも知れません。
 さらにしばらくすると、今度は185系踊り子号がやってきて、横に並びました。東海道の名優ここに集合!これも撮っておく。
 さて、いよいよつばめ号が発車する時刻になりました。係員の指示で、皆黄色い線の内側に下がります。つばめ号の乗客に、早く車内に戻るようにと警告を出していた係員も、「俺が乗り遅れちゃう」と言って、慌てて車内に戻って行きました。
 皆に見送られて、つばめ号はゆっくりと名古屋目指して走っていきました。
 
 さて、せっかく根府川へ来たのですから、しばらく観光でもしましょうか。
 でも近くには手軽に入れる温泉もなく(大きな観光施設らしきものはあったけど)、仕方がないので根府川橋梁を通過する列車を撮りに行くことにしました。
 ミカンの森(畑でしょ、畑!)が広がる山中を彷徨い、ようやく撮影ポイントに到着。しかしここは高すぎて、橋を通過する列車がかなり小さく見えます。でもその分遠くの景色がよく見えて、大変きれいです。特に今日は天気がいいので、海岸線がずっと遠くまで見えています。
 ミカン畑越しに見える根府川鉄橋。ここで113系とスーパービュー踊り子を撮影。色づいたばかりのミカン越しに見る113系は、まさに『湘南色の中を走る湘南色』といった感じで、風情があって面白かったです。湘南色って、沿線イメージに合ったいい色だなぁ、と改めて思いました。
 
 こうして、今日の撮影旅行は無事に終了。帰りは113系の普通列車に乗って、東京へ戻りました。


←戻る



 

inserted by FC2 system