山と雲のケンカ

 私は見てしまったのです、山と雲が喧嘩しているのを。
 そう、あれはちょうど秋の終わりの頃だったかな。ある銀嶺のフモトにある、観光施設の上を超科学的魔法を使って低空飛行していると、その銀嶺が私に「どう?私ってキレイでしょ」などと言ってその姿を自慢し始めました。そしたら上の方からグサリという音と「痛いじゃねーか、この野郎」と誰かが怒鳴る声が聞こえてきたのです。どうやら、山が自慢するあまりに、上空を飛行していた雲にその頂上をぶっ刺してしまったようです。そしたらどうでしょう、雲に頂上を刺してしまった山の姿が、たちまち見えなくなってしまったではありませんか。
 どうしたのかと私が二人に聞くと、雲はこう答えました。
「誰にも自慢できないように、おまえの姿を隠してやる」
 それに対して山はこう答えました。
「のんびり空なんか飛んでんじゃないわよ!だいたいね、あんな低いところを飛ぶから悪いんでしょ」
 もうこのままではらちがあかないので、私はこう言いました。
「雲、あなたの気持ちはわかるけど、そんな事をしたら逆にあなたが観光客に嫌われてしまいますよ。朝陽や夕陽に照らされたあなたは特にキレイなんだから、山と仲良くして私達を楽しませてちょうだい。
 それに山、あなたの良さは姿だけじゃないでしょ。あなたに登って楽しむ人たちがいることも忘れないで」
 こうして山と雲は仲直りをして、美しい夕焼けの景色になりました。おしまい。


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