ドバト愚連隊
〜ドバトたちの秘密〜

 日本の寺社の境内には、たいてい、ドバトという種類の鳩たちが集団で住み着いています。私たちにとって身近な生物でありながら、彼らがいったい何者なのかということは、意外と知られていません。
 ところが、私は先日、ドバトたちの正体の片鱗を見てしまいました。
 あれは、私が某大社へ初詣に行ったときのことでした。ひととおり参拝を済ませた私は、退屈しのぎにドバトの群れる境内の中を探検していました。そして、祈願申込受付などの設備のある白亜の建物の後ろをのぞき込むと、後ろの低い建物との間に、細い一本道がありました。建物と建物の間に挟まれて、日が全然当たらない怪しい道。その入口には立入禁止の札がなく、門も完全に開いています。しかも向こうの出口が公衆トイレへ続く道につながっているので、とりあえず興味本位で入ってみました。
 するとどうでしょう、そこにはたくさんのドバトたちがひしめいているではありませんか!しかも彼らは後ろの建物に出入りしています。その建物を調べてみると、何と鳩小屋でした。その鳩小屋はたいへん大きく、鳩サイズに区分された棚や、その棚の中で休憩している鳩たちが金網越しに見えます。金網には、鳩が飛び立つための出入り口が複数付いています。どうやら、某大社のドバトたちはここを住みかにしているようです。
 その時、私は気付きました。この小屋は、実はドバトたちが某大社の境内を自分たちの植民地にするために使っている、ドバトの軍事基地なのだということに。そして私たち人間がドバトたちの奴隷にされ、彼らの植民地計画にうまく使役させられている、ということにも。
 それでは、ドバトたちはどうやって人間を自分たちの奴隷にしたのでしょうか。彼らは、実は魔術を使うことが出来ます。この魔術に引っかかった人間たちは、ドバトたちが可愛く思えてきて、ついつい彼らに餌をあげてしまいます。さらに宮司さんなどは、彼らに住みかを提供することもあります。こうしてドバトたちは、食糧の安定供給源と軍事基地を手に入れることに成功します。一方人間たちは、自分たちがドバトの奴隷になっていることには全く気付かず、彼らの喜ぶ姿見たさにどんどんと奉仕していきます。こうして、ドバトと人間の主人―奴隷関係が成立していきます。
 しかし奴隷というものは、時として主人に刃向かうこともあります。ここでは、人間がドバトを捕まえようとしたり、蹴散らしたり、餌を与えないようにしたりするのがこれに当たります。ところがドバトたちはとんでもない武器を使って、刃向かう人間たちを懲らしめます。そのとんでもない武器とは、俗に言う「鳩の爆弾」です。天空高く舞い上がったドバトから投下されたこの爆弾は、的確に目標物をとらえ、その姿の汚らしさから目標物をうんざりさせます。
 さらに効果はそれだけにとどまらず、時として恐ろしい生物兵器に変身することもあります。まぁ、ドバトという生物が自らの体から生み出した爆弾だから、もともと生物兵器なのでしょうけれども、その爆弾が、感染率は非常に低いが一度感染したらたいていは死に至る、という強力な細菌にまみれていることを考えると、人間が生み出した生半可な生物兵器と同じくらい、いやそれ以上の威力があると言えるでしょう。
 どうです?ドバトたちがいかに高い知能を持っているかがお分かりでしょう。こうしてドバトたちは次々と人間たちを奴隷にし、境内を、さらには我が国をも占領していきます。その証拠に、人間がすぐそばまで来ても逃げたりせず、俺は支配者だ、と言わんばかりに堂々としていますね。現在では、東京の官庁街ですら、行き交うエリートサラリーマンや国家公務員に混じって、歩道の真ん中を堂々と一人歩きしているドバトを見かけるようになりました。
 ドバトは、一見すると野生の鳩と似たような形をしていますが、彼らは高い知能を備えた恐るべき侵略者なのです。皆さんも、ドバトの奴隷になって、自分の住む地域を彼らの植民地に仕立て上げたりすることのないよう、くれぐれもご注意を。世界の大国日本がドバト如きの植民地になっては、あまりにも情けない。

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