第一章 計画を立てよう

 計画の前に、まずは目的を
 旅行形態は目的によって変わる、ということは皆さんも御存知の通りですね。逆に言うと、旅行計画を立てる前に目的をしっかり設定しておかなければならないということです。まぁ、たいていは何らかの目的があるから旅に出よう、と考えるわけですから、このへんは大丈夫ですね。
 ですが、目的が複数あって、それらが複雑に絡み合っている……なんてこともあるわけでして、そんな場合には、まず紙に書き出したりして、整理してみるといいですね。

 時刻表の種類(大きさ)と選び方、使い方
 ここで言う時刻表とは、駅で配っている『当駅の発車標準時刻表』などというものではなく、全国の鉄道路線を扱った、あの分厚い本のことです。
 時刻表は大きさ別に、大判、中型、小型があり、主な発売元はJRとJTBです。ここでは、JTBの発行した時刻表を例にとって、説明したいと思います。
 まず大判ですが、こちらはJR全路線・全駅の時刻(首都圏や大阪圏内の通勤路線は、昼間の時刻が省かれています)が載っている上に、私鉄・第三セクター・地下鉄の始発列車と終電、国内・国際航空路線、航路、ハイウエイバス、夜行バスの全てと、観光地での主要通勤路線バスの時刻が載っています。さらに巻末には、日本観光旅館連盟会員旅館・JTB協定旅館ホテル、日本ホテル協会会員ホテル、全日本シティーホテル連盟加盟ホテル、国民宿舎などのリストが載っています。鉄道とそれ以外の乗り物を組み合わせて行動しようと考えている人や、列車の写真を撮ろうと考えている人には、とても便利です。 しかしその分、図体が大きくて重いので、実際の旅行に持っていくと、かなりかさばります。それでも、天変地異でトラブルなどがあった時には、鉄道以外の乗り物に頼らざるを得ないこともあり、大判時刻表が役立つこともあります。

 次に中型ですが、JTBのは『コンパス時刻表』という名前で売られています。中型も基本的に、JRの全駅・全列車(通勤路線は始発と終電のみ)が掲載されています。ハイウェイバス、国内航空路線、長距離フェリーも全路線が載っているようですが、私鉄は有料特急だけ、短距離のフェリーは離島を結ぶものだけしか載っていません。さらに、国際航空路線と国際航路は載っていません。ホテル・旅館のリストは日本民宿協会登録民宿のみです。
 それでもJRだけを利用するなら、小型な分かさばらず、使い勝手はいいです。

 最後に小型ですが、どの会社から発売された時刻表でも、『携帯』とか『ポケット版』などと名の付くものは、まずこの分類に入ると考えた方がいいでしょう。中身ですが、JR路線でも一部の小駅の時刻が省かれています。例えば、日豊本線の佐伯と延岡の間には9つの駅ありますが、これらの駅が全く載っていない時刻表もあります。
 国内航空路線と夜行のハイウェイバスは全て載っているようですが、私鉄は有料特急のみ、昼間のハイウェイバスは東名高速道路のバスしか載っていません。さらに、航路は全く載っていません。
 携帯には非常に便利ですが、普通列車で旅をしようとしている人や、ローカル駅を利用しようとしている人にはまず向きません。

 時刻表の選び方ですが、自分の旅行の目的をよく考えて、それに合った時刻表を選ぶことが重要です。例えば、色々な乗り物を使って日本をまわろうとするときや、列車の撮影が目的ならば、情報量の多い大判時刻表が必要になってきます。しかし、JRの特急列車だけを使って主要都市の観光に出かけるのなら、小型で充分です。普通列車を主に利用するのなら、携帯のしやすさと情報量の均衡がとれている、中型の時刻表が便利でしょう。

 さて使い方ですが、これにはコツがあります。まず時刻表で計画を立てる時、つまり乗る列車などを選ぶ時ですが、目的地から出発地(自宅の最寄り駅)へ向かってたどっていきます。こうすると、『設定した時間に目的地に到着するには、どの列車(や乗り物)を選べばよいか』がわかってきます。わかったら、選んだ列車(や乗り物)の時間を、順番に紙に書き出していきます。
 次に、旅行に出発した時ですが、本番では時刻表は使わず、計画を立てた時の、列車や乗り物の時間を書き出した紙を使います。時刻表は、乗る列車を変えたくなった時に使用します。こうすることで、乗り換えが短時間にわかり、便利になります(計画を書いた紙は、ポケットなどすぐに取り出せるところに入れておきましょう)。

 宿屋の話
 旅行者にとって最もくつろげる場所、それはなんと言っても宿屋ではないでしょうか。しかし一口に宿屋といっても、いくつかの種類があり、行動の予定と宿屋の性格が合わなければ、宿屋のために計画を変更せざるを得なくなったり、快適に過ごせなくなることもあります。
 ここでは、宿屋をいくつかに分類して、性格を述べていきたいと思います。

1、ビジネスホテル
 大きな町の駅前にあって、値段も手頃なのがこの種類の宿屋。出張の時、毎度のようにお世話になっている人も多いと思います。
 客室は基本的に洋式で、ベッドのある寝室と専用バスルームから成っています。バスルームは洋式トイレと1つになっていて、洗い場に当たる部分に洋式の便器と洗面器があります。ユニットバス等と呼ばれているようですが、口の悪い人は『トイレ風呂』と呼んだりします。
 門限は、ないところが多いですが、あるところでも深夜2時とか、そのくらい遅い時間です。チェックアウトの時間も、始発列車に間に合うようにしてあります。ですから、夜遅く着いて朝早く出る人には非常に便利だと言えます。
 食事は基本的につきませんが、チェックインの時に申し出れば、別料金で朝食を食べられるところが多いです。朝食はホテル側が朝食用に用意したメニューに限定されますが、栄養のバランスもよく、1日を快適に過ごすのにうってつけです。
 ビジネスホテルでは、セルフサービスが基本です。しかしその分、自分に合った方法で快適を得られると思います。
 ホテルによっては、共同の温泉浴場が付属しているところもあります。

2、旅館
 『宿屋でくつろぐことが目的』という旅行者向けの宿屋です。一泊2食付きが基本のため、夜遅くに着いて、早朝に宿を後にする人には向きません。しかしながら、翌日はのんびりと観光をする、という人にはうってつけです。
 客室は基本的に和式です。
 サービスはたいてい客室係が行います。そのため宿泊客の動きはパターン化されます。つまり客室係の運んできた豪勢な料理(それも食べきれないほどの量が出されることが多い)を食べた客は、付属の共同温泉に入るか、夜の町を散策するかして、その間に客室係が部屋に布団を敷きます。夕食の前に温泉に入った場合には、時間にもよりますが、部屋に戻ると御馳走が並んでいた、なんてことになります。
 宿泊客は自由と、それなりの金額(ビジネスホテルの宿泊料の倍くらい)を支払うかわりに、至れり尽くせりのサービスを受けるのです。
 なお、最近は客室係が介入してくるのを嫌がる客が増えたのか、セルフサービスに近いサービスを提供する旅館も増えてきています。
 
3、民宿
 簡単な造りの宿泊施設で、感じとしては民家の延長です。そのため、トイレ・浴室は共同で、個人経営のところは民宿の家族も利用します。さらに、『各客室のドアはふすまだから、鍵がない』、なんて所もあります。建物や寝具の手入れは千差万別なので、当たり外れも大きいです。民宿の具体的なイメージとしては、テレビゲームの中世ファンタジーRPGに出てくる『宿屋(INN)』を和風にしたような感じです。
 基本的に一泊2食付きですが素泊まりもでき、値段も手頃なところが多いです。ですがやはり、深夜に着いて日の出前の早朝に出発する、なんて行程の人には向きません。宿屋の家族に迷惑をかけるからです。

 以上、3種類の宿屋について述べました。いずれの種類も独自の特徴があり、上手に選ぶことで真価を発揮できるようになっています。
 宿屋は、JRや旅行会社の窓口で、乗車券類と一緒に予約しておくことを強くお勧めします。そうすることで、交通機関か宿のいずれかが満員でとれない場合、簡単に日程をずらして予約できるからです。また旅行先に着いたときに、宿泊施設が満杯で野宿するハメになった、とか、宿を探して散々歩き回った、なんてことも避けられます。着いた先で直に選ぶのも、本当は楽しいことなんですけどね。



 夜行列車を有効に使おう
 夜行列車とは、深夜帯(終電から始発列車までの時間帯)を貫いて走る、長距離列車のことです。ブルートレインはその代表です。
 夜行列車と言えばすぐに寝台列車を思い浮かべる人が多いようですが、座席車のみの夜行列車もあります。夜行列車の利点は、何と言っても、夜に出て朝着くという運転形態と、軌道の上を走るという安定性にあります。つまり宿屋に宿泊する必要も、出発当日に早起きする必要もなく、事故や大幅なダイヤの遅延に遭う可能性も、夜行バスに比べてずっと低くなっています。
 片道900kmくらいまでなら、出発当日も到着した日も、1日丸々有効に使えて、しかも飛行機や新幹線を使うよりも安上がりになります。

 さて、夜行列車の中で最も安価なのは、何と言っても、ムーンライトシリーズに代表される座席車の夜行快速でしょう。座席夜行快速には、東京と大垣を結ぶムーンライトながら、新宿と新潟を結ぶムーンライトえちごがあります。
 普通車の座席指定券は、北海道が300円、それ以外は510円です。その他に乗車券か、青春18きっぷがあれば利用できます。
 上記2つの夜行快速も、青春18きっぷのシーズンに運行されます。
(以前は、この2つの列車は定期列車として存在していました。さらに関西〜九州・四国を結ぶ臨時夜行もあったのですが、全て廃止になりました)


 ムーンライトシリーズの夜行快速は、その合理性と廉価性から、いつも大盛況です。


 さぁ、行程を組もう!
 では、実際に行程を組んでみましょうか。
 乗り物の行程を組むときには、当然ながら時刻表を使います。時刻表のうち、大判時刻表は大きく10の部分からできています。
1,まず鉄道路線の載っている索引の部分。これで目的地までの経路や、自分が乗ろうとしている路線のダイヤが載っている頁を調べます。
2,次に、前半の黄色い頁。トクトク切符(季節限定のとってもお得な切符)の情報や臨時列車のダイヤ、工事によるダイヤの変更、限定オレンジカードの販売情報なんかが載っています。ルートが決まったら、一応目を通しておきましょう。工事区間はないですか?工事で不通区間が生じても、代行バスが運転されない場合もあります。
3,新幹線と昼行・夜行特急のダイヤが載っている部分。特急列車を主に利用するなら、ここで調べるのが手っ取り早いです。
4,在来線のダイヤ。これが時刻表のメインでしょう。時刻表の大部分の頁をこれが占めます。しかも頁の下端には、駅弁の情報まで載っていたりして、意外と親切!
5,私鉄有料特急と長距離バスの頁。
6,各地方の私鉄・バス・連絡船が載っている頁。観光をしようと思っているなら、ここで調べてみましょう。ただし大都市の私鉄は始発と終電のダイヤしか載っていませんし、都バスの通勤路線のようなバスは一切載っていないので注意。
7,定期観光バス。公共交通の便が悪いところを観光する時に、特に重宝します。
8,航空機のダイヤ。前半部分には、市内から空港までの行き方が載っています。日本に離発着する国際線のダイヤも載っています。
9,JR旅客営業案内。ピンク色の頁です。運賃計算のルールや列車の編成表が載っています。運賃を調べる時に使いましょう。後ろには、JR発行の時刻表ならJRの旅行会社の場所が、JTBの時刻表ならJTBの各営業所の場所が載っています。旅行の申し込みは、そこでどうぞ。
10,ホテルや旅館の載っている黄色い頁。ここで宿泊施設を選ぶと手っ取り早いです。


 さて、時刻表上の列車は、左から順に並び、上から下に向かって走っています。ですから基本的に、上から下へ、左から右へ見ていきます。ただし、種別(普通、とか、特急、とかのこと)間の速度差が大きく、なおかつ運転本数の多い路線では、後から発車する列車が先に書かれていることがあります。追い抜きなどがあるからです。
 列車番号のところを見てみましょう。ここに書かれている列車番号は、上り列車が偶数、下り列車が奇数になっています。数字の後にあるアルファベットは使用する車輌を示しており、原則としてMが電車、Dが気動車、アルファベットのない列車は客車です。

 時刻表の選び方のところで扱ったように、目的地に着きたい時間を決めて、目的地から出発地に向かって見ていくと、その時間に着くにはどの列車に乗ればよいかがわかってきます。この場合、時刻表は下から上に向かって見ていくことになります。しかし、途中に夜行列車など核になる列車がある場合や、極端に本数の少ない区間を通るときは、その列車の乗車駅まで、その列車の発車時刻を基準に見ていくことになります。

 熟練の鉄道ファンなどは、到着時間を設定しないで計画を立てることもあります。この場合でも、やはり核になる列車がある場合は、その列車の乗車駅と発車時刻を、目的地とそこへの到着時間と見なして、乗車する列車を決めていきます。そして核になる列車を降りてからは、時刻表を上から下、左から右に見ていく通常の方法で、列車を選んでいきます。

 普通列車や快速列車を利用する時は、出来るだけ長距離を走るものを選ぶといいです。と言うのも、区間列車を乗り継いで行くと、結局は一番最初の列車に乗った駅からの直通列車に乗ることになった、なんてことがあるからです。特に東海道本線に多いパターンですので、列車選びはよく考えてしましょう。乗り換えは面倒ですし、途中駅からでは座れないかも知れないですからね。



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